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今はPCやスマホで情報を簡単に表示できるようになりました。でも、これは便利な側面だけではありません。あなたの思考を狭める仕組みにもなっています。なぜならば、自分が欲しいと思われる情報が優先して表示され、自分から探しているつもりでもAIによって提示された情報を選んでいるだけだからです。つまり、「自ら意識的に探し、選ばなければ似たような情報ばかりが集まるようになる」のです。そうなると、その情報の中で使われる言葉にしか触れなくなるわけですね。

だからこそ、学んで欲しいこと④では【語彙力を高める】を挙げたいです。

●ナレーターが言葉を知らない?

声優・ナレーターは言葉を扱う仕事です。
プロとして言葉に触れることが前提なのに、なぜか語彙力がなさすぎるという問題が起きています。

これはプロとして活動している方にも言えることで、その劣化が著しいと思えます。

近年、日本という国が持つ精神性・考え方・言語などさまざまな面に注目が集まってきています。
その中で日本語という言語は「最古の言語であり、正しい日本語を喋ることができれば喧嘩はおきない」ということを言う方もいます。
喧嘩は意見の相違により起こると思われがちですが、ほとんどの場合は認識のずれによるものらしいんですね。その認識のずれは「お互いに正しい言葉を知らないから起こる」というんです。

日本語はそこまで表現できる言葉なのかどうか、という疑問はありますが、「雨」に関わる表現だけでも2000種類あるそうです(真偽はわかりません)。「さめざめ」「しとしと」など、その状況を表す言葉が実はたくさん用意されていて、ただ単に私たちが知らないだけだと。

言語学者ではありませんから、そこまで精通しろというのも無理があります。
でも、辞書に書いてある言葉くらいは目を通しておきたいです。
辞書に書いていない言葉は、基本的には存在しない言葉で、その時々による造語ということになります。国語辞典についてはあとで触れます。

声優やナレーターは用意された原稿を喋るだけの仕事だから別にそこまで、と思う方もいそうですね。でも言葉には意味があり、その意味を理解できずに伝えるのと理解したうえで伝えるのではどちらのほうが良いでしょうか。

●語彙力を高める

これはあくまでも個人的な見解ではありますが、声優・ナレーターの仕事には客観的な技術力を図る指標がありませんので、プロとして「言葉に対する意識が高くあるべき」だと思います。

語彙力を高めるにはどうしたらよいのか。
方法はいくつかあります。
簡単な方法としては、あらゆるジャンルの書籍に触れることです。
推理小説から始めるのでもかまいません。純文学でも構いませんし、SF小説でも良いです。
本を読むことになれていない方はとっつきやすいところからでかまいませんので、本を読むようにしてほしいです。

難しい方法、というより「つまらない方法かもしれないけれど最も効果的な方法」もあります。
それは、国語辞典を音読することです。
アクセント辞典でもかまいません。アクセント辞典ならば、イントネーションの確認もできますから効果的です。

でも語彙力を高めるには、国語辞典が良いと思います。

ちゃんと意味が載っていますし、言葉に対する意識を高める意味でも、日常でわからない言葉・意味の説明できない言葉と出会ったら、国語辞典で調べる習慣をつけると良いです。
基本的には、通常の国語辞典に掲載されていない言葉は、使われていない言葉か造語、業界特有や企業文化で生み出された言葉ということになります。
だから国語辞典に掲載されている言葉を覚えることは王道となります。

今はインターネットで検索すれば簡単に答えが確認できます。
でも、調べるのは手軽ですが、「調べた言葉しか触れることができない」
これは調べる言葉だけを考えると便利なようですが、もったいない。
なにがもったいないかというと、調べたい言葉しか目に入らないからです。

国語辞典であれば、その言葉を調べる段階で他の言葉も目にします。
調べる語句のついでに別の言葉にも触れられるんです。
あなたの目的は語彙力を上げることです。
その過程で知らない言葉を調べる作業なので、ついでに覚える言葉を増やすことは、効率的に語彙力を高めることに直結します。

●AIによる罠

最近SNSなどでは、自分の興味のある話題を予測して表示してくれます。
これは考えようによっては、
「自分に興味のないと予測された話題は表示されない」ということです。

また、運営企業側の問題・理由で表示されないということも行われています。
つまり自ら調べようとしなければ出会うことのない話題として消えていくということです。
また見つけた情報すべてが真実ではないと思いますから、自分で情報を調べ、情報の取捨選択が必要になります。
だから、インターネットは便利ですが活用の仕方については考えるべきです。

インターネット検索での例をお話しますね。
Wikipediaというサイトがあります。誰でも書き込める情報サイトです。
ここで情報戦が行われていることを知っていますか?

現在では新聞記者も自分で調べた情報ではなく、誰が書いたかわからないWikipediaをもとに記事を書いていると言われている時代です。
では、そのWikipediaに嘘の情報を交えて記載する者がいて、それが嘘だとわからない者が記事として引用した場合の影響力は計り知れません。
つまり、プロパガンダとして使われてしまう可能性、すでに使われている可能性が考えられるということです。その例として韓国語のハングル文字があります。

かつて日韓併合がありました。
日本政府は朝鮮人の識字率の低さを解消するため、学校教育を徹底しました。
難しい漢字では覚えるまでに時間がかかる。そうすると識字率を上げるために時間がかかってしまう。
そこで記号を組み合わせて成立する文字として、ハングル文字を開発・普及させたというのが普通の認識でした。

それが今ではどうでしょう。

もともとあった文字だとか、それを朝鮮人の王朝が普及したとか、そんなことがWikipediaに記載されていました。知らない人が読んだら韓国が国家としてしっかりした国だったという印象になると思います。
実際は染色は黒色しかできなかったとか、新生児出産における死亡率が高く、衛生観念がなかったために、日本政府が道路・上下水道・病院の設置などを整備してきた、という歴史的に事実とされてきたことが覆い隠されていたりします。

韓国という国が好きな方も多いようなので、このあたりにしますが、少なくとも韓流ブームが来るまでのWikipedia記載と今では大きく違う、というのが認識です。

インターネットでの情報戦なんてこんなものです。
つまり「便利だけど正しいかどうかは担保されない」のがインターネットという空間です。
インターネットは万能ではない、ということを理解しておくことは必要です。

●国語辞典の選び方・楽しみ方

国語辞典もいろいろな種類があるので、本屋で読み比べてみてください。
自分で知っている言葉をいくつか読み比べてみて、わかりやすいと思える国語辞典を買うのがおすすめです。
たとえば「右」という言葉をあなたならどのように説明するでしょうか。
簡単な言葉だけど言葉で説明しづらいものを読み比べてみると、各社ごとの特徴なんかも見えてきて面白いと思います。

現場では最近もう誰も触れなくなりましたが、「一挙放送」という言葉が使われることがあります。
これは「一挙に放送」という言葉を知らないからなのか、尺の関係からなのか知りませんが、「一挙放送」と平板で読むことで定着してしまった悪例だと言えます。

言葉は時代によって変化していくものと言えばそれまでですが、書かれているからという理由で「正しい言葉かどうか」何の疑問も持たず読んでしまうような声優・ナレーターにあなたはなりたいですか?

「プロとしてどうあるべきか」は現役の方々にも今一度考えてほしいことだと思います。プロとして活動しているけれど、言葉への意識が高いプロは昔よりも減っている気がします。
それくらい、今の業界はレベルが低いと思います。

あなたがプロとして活躍したいのであれば、今から少しずつで良いので語彙力を高め、言葉への意識を高く持つようにしてほしいです。日本語を美しい言葉として表現できるようになれば、それは日本語を扱う人として素晴らしいことです。
「語彙力があるかどうか」
それだけであなたの価値が上がります。
周りの同業者が語彙力に乏しい中で、あなたの語彙力が高ければ、それだけで差別化になります。
それは、やがてあなたをより高みへ引き上げることになります。

●語彙力が高いと現場でどんなことが起こるか

最後になりますが、実際にあった例を書いておきます。

ある現場でずいぶん前の出来事です。
原稿に「家の中で楽しむ◯◯」という文章がありました。
◯◯は商品名です。

「家」を「いえ」と読むか「うち」と読むか。
あなたならどちらで読みますか?

ここで、ナレーターは「うち」と読みました。
なぜなら、「家(いえ)」とは「人が住む場所を表す概念」であり、原稿の「家(うち)の中で楽しむ」とは、「特定の人(あなた)が住む場所」を表す場所としての「家(いえ)」である以上、「あなたが住む場所は『うち』と読む」のが正しい日本語だから、というものでした。

そこでナレーターはそこまで説明した後に、「企業としての判断はどうしますか?」と聞きました。
クライアントの担当者は数人いて、
「正しい日本語ではなくなるかもしれないけれど、CMなので『いえ』でお願いできますか?」
とナレーターに話をし、ナレーターは「わかりました」と言ってクライアントの判断に従ってナレーション収録をしました。
このナレーターはクライアントからなんて言われていたでしょうか。

「さすがプロだ。日本語のことをよく知っているナレーターさんがいると、本当に心強い」

結果的にクライアントの判断で読むことになりましたが、ナレーターのことは大絶賛です。
別に「いえ」と読んでも結果は同じじゃないか、と思われるかもしれませんが、ナレーターは「プロとして日本語を扱う者」としての証明をしてみせたわけです。

これが、そのナレーターの価値です。
クライアント担当者からすると、そのナレーターの存在は「ただナレーションをする人」ではなく、「正しい日本語の知識をもとにナレーションをしてくれるプロ」だという認識になったわけです。

こういうことを言うと「嫌な顔をされるんじゃないか」と思われるかもしれません。でも、このナレーターさんは、「企業としての判断はどうしますか」と判断を委ね、企業の判断どおりに読むことにしました。

クライアント担当者たちからしたら、このやりとりは「嫌なことを言うナレーター」ではなく、「自分たちが知らなかった正しい日本語を扱えるナレーターに、間違った日本語を使わせてしまって申し訳ない」というプロのナレーターへの認識を新たにする機会となりました。

こういうことは、なかなかありません。
それは、正しい日本語かどうかという話にならないことが多いからです。
「日本語が間違っていない場合」がほとんどだと思いたいですが、
「クライアントも制作担当もナレーターも気づかないから」
だとしたら、とても怖いことだと思いませんか?

●語彙力を高めることは正義

声の仕事をするということは、「誰でも喋れる日本語を扱うこと」です。
「お金を稼いでいるからプロだ」ということは正しいと言えば正しいのですが、
「プロであるからこそ、どうあるべきか」
という部分でプライドを持ってほしいと思っています。

正しい日本語を扱うことのできるプロが増えたら、声の仕事の専門性がもっと高まるし、職業としての価値も高まると思います。
今、NHKのアナウンサーも日本語が乱れています。
NHKアクセント辞典を出していながら、必ずしも守られていません。
「正しい日本語の最後の砦がナレーター」だと言う方もいます。

あなたは、どう考えますか?

最後までお読みいただきありがとうございました。