ここでは、声優になるための方法について記載します。
一般的には「声優の専門学校に行って養成所に入り、事務所の所属試験に合格すること」と思われていますが、業界内でマネージャーをしている側の意見が同じではありません。
そういったことについて書いていきたいと思います。
そのため、一般的に言われていないこともマネージャーの立場で書きますので物議を醸すかもしれません。

●声優になるにはどうすればよいのか
これはいくつか方法があります。
1.声優事務所付属養成所から事務所に入る
2.専門学校を経由して養成所から事務所に入る
3.舞台役者から事務所に預かってもらう
4.その他
一つずつ説明をしていきます。
1.声優事務所付属養成所からデビューする
基本的にはこれが最短です。
ただし、養成所に入れるのかどうか、養成所で頭角を現して事務所側から育てたいと思ってもらう成果を養成所内であげられるかどうかが肝心です。
養成所には事務所附属のものとそうでないものがあります。
事務所附属養成所の場合には1年か2年程度のレッスン後に試験を受けて、合否が決まります。この合否も事務所に加入しやすい事務所とそうでない事務所があります。加入がしやすい事務所はその分、同期で加入するライバルが多くなります。そのためどのように事務所のスタッフに自分を売り込めるかが大事です。
少数精鋭で採用する事務所の場合でも自分を売り込むことが大事です。
養成所への入所は事務所側からすると、一面ではビジネスの側面もありますから、実はそこまで条件は厳しくないと思います。
実力をつけて20台後半から入所するのであれば、実力はないけど高校卒業したばかりのほうが、事務所としては喜ばれます。
マネージャーとして正直な話を書いてしまうと「専門学校で2年を無駄にしないで欲しい」です。
専門学校を否定するつもりはありません。
否定したいわけでもありません!
でも、専門学校での2年間で上達したとしても、近年アニメでは低年齢化傾向は顕著です。
つまり専門学校に行かずに、高校卒業後に養成所へ入ってもらえるほうがチャンスは多いということです。
こういうことを書くと物議を醸すのであまり書いてはいけないのかもしれませんが。
専門学校で身につけてしまう「変な癖」や「余計な知識ばかり」で、実力が伴わないことが受け入れる側の事務所では問題としていることが多いです。
それならまっさらな状態で、真剣にレッスンに向き合ってもらうことのほうが有意義だと考えます。
これはおそらくどこの事務所マネージャーも同じことを考えていますが、養成所もビジネスですから表立って言えません。
なぜなら、ほとんどの養成所は専門学校からの卒業生を受け入れることで運営されているからです。
専門学校からの卒業生が来なければ、ほとんどの養成所が赤字経営になってしまうかもしれません。
養成所という場所は一部を除きほとんどが学校法人ではありませんし、最終学歴が「高校卒」か「専門学校卒」では親御さんからしたら「専門学校卒」を望む理由もわかります。
2.専門学校を経由する
おそらくほとんどの方がこの流れに乗るのですが、専門学校→養成所→事務所に預かってもらうというものですね。
専門学校で養成所に入る素養・実力を育てて、養成所の門を叩く。
専門学校でどれほどの実力が付くかは未知ですが、専門学校卒業という卒業資格を得られることは大きいと個人的には思います。
将来的に夢をあきらめて働こうとしたときに、高校卒業と専門学校卒業では印象が違うのは現代でも同じなのではないかなと思うからです。
昔ほど学歴偏重主義はないと思いたいですが、中小企業であればあるほど学歴は気にするものなのではないかな、と。
実際は会社によるのでしょうが、たとえば二十代後半の高校卒業よりは、専門学校卒業の方が採用されやすい、とかあるかもしれませんね。
注意したいのは、専門学校のうたい文句に「〇〇名、養成所入所実績」というものがあります。これは否定しづらい面もありますが、専門学校に行ったかどうかを気にする事務所附属養成所はあまり多くありません。
これは事務所の考え方に関わることなので一概に言えないのですが、
・偏った知識や中途半端な自信などいらないので若い人が欲しい
・ある程度の素養があるほうが教える側の負担が減るので良い
と、それぞれの事務所によって方針が違いますので、そのあたりのことは確認できるのであればしてみるのも良いかもしれません。
養成所に聞いてみたらいい。
「高校卒業してから専門学校に行かなくても試験を受けられますか」と。
ほとんどの養成所は断らないと思います。
養成所に合格するかどうかは、その養成所次第ではありますが。
養成所の運営というビジネスの側面から見ると、全国の専門学校から養成所入所のためのオーディションに来てくださいと言われれば、養成所側は基本断りません。
それは、専門学校から養成所に入る人数が確保できれば、養成所がビジネスとして成立しやすいからです。
では専門学校を経由しないと養成所に入所できないかと言われれば、上に書いたように若ければ若いほうが良いという考え方もありますので、必ずしも専門学校を卒業しなければならないというわけではありません。
親御さんからすると、わけのわからない業界のよく知らない養成所にお子さんを入れさせることに不安を感じて、とりあえず専門学校から入りなさいという方針をとることのほうが実際大きいのではないかなと感じてはいますが。
今は情報を集めようと思えば集められる時代ですから、そのあたりのことも考えて調べてみることをおすすめします。
なぜなら、あなたの人生に関わる問題ですから。
3.舞台役者から事務所預かりに
舞台をやっていたら事務所のマネージャーが見に来て、声をかけられる。
とても夢のようなお話ですが、実際にあります。
とはいえ、学芸会のような仲間内で企画してやってみたという舞台では見に行く価値がないと思うので、ちゃんとした演出家による舞台出演、というのが望ましいです。
劇団系の役者さんを集めている事務所なんかもありますので、舞台中心に活動したい方は、その劇団に事務所の預かりとして活動している方がいるかどうかを調べてみるのも良いかもしれませんね。
ただし、この流れで事務所に預かってもらう場合、その事務所はアニメにあまり強くないことが多い印象です。
どちらかと言えばナレーション、それもCMなどの候補出し要員として声をかけられることが多く、好きな舞台の傍ら、ときどきナレーションの仕事でお金を稼ぐという感じになると思いますので、声優デビューに間違いはないけれど、おそらく皆さんの希望とは少し違うかもしれません。
4.その他
特例を挙げればきりがないので上記3パターン以外をその他としました。
たとえばYoutube配信者でチャンネル登録者数50万人とかで、それなりに声が良いとか芝居などができそうだなという人が、何かの縁で声をかけられてつながりができるということもあります。
聞いたことがあるのは、食えない舞台役者をやっていて、ラーメン屋でバイトしていたら外画のディレクターに声をかけられ、出演のチャンスをもらった。その後、何度も声をかけてもらえて事務所を紹介、事務所所属になるというものです。
これは運とか縁の範疇ですから、奇跡のようなものだと思いますし、今の時代、声優志望者が溢れる時代でもあるので、このような話はほとんど聞かなくなりました。
フリー(特定の事務所に所属せず個人として活動すること)として仕事をして、アニメや番組などのレギュラーを持っている人が事務所の門を叩く、または紹介してもらう。
これはすでにデビューしているともいえるので、このページの趣旨とは少し違いますが、それでもレギュラーを持っていれば所属になることも珍しくはありません。たいていは「準所属」や「預かり」という立ち位置で一年程度様子を見ることになるとは思いますが。
一般に募集している作品のオーディションで合格できることができる実力があれば、このような機会もあるのかもしれませんが、なかなか現実的ではないような気がします。
ここまで読んでくださった方に感謝の気持ちとして、マネージャーとしての本音を書きます。
●専門学校に入る必要はありますか?
正直な話、専門学校に入る必要はありません。
「専門学校を卒業したから養成所に入れた」
これを実績として掲げる学校は多いですが、養成所運営もビジネスですので、専門学校と養成所には関係性があります。
専門学校からオーディションに参加してほしいという依頼があり、養成所担当がオーディションに行く。これは、養成所もビジネスですので集客の可能性があれば行きますし、説明会も行います。
事務所の養成所側視点からすれば、専門学校卒でないと受け入れないという制限をかけているところはほとんどないと思います。
日本ナレーション演技研究所はアーツビジョンのグループですから、アーツビジョン・アイムエンタープライズ・VIMS・クレイジーボックスのどこかに入りたいとなれば、行くしかないと思います。
学校法人の資格もありますしね……。
それ以外の養成所では、専門学校で身に着けがちな余計な癖や知識などが成長に邪魔だと考えている場合もあります。
ただ日ナレは何年もいられるんですよね。
日ナレに十年近く在籍している人がプロになれるかといえば、正直難しいと思います。養成所側が夢を食い潰す側になりかねないので、難しいところです。
また、様々な養成所で事務所に加入できずに養成所を何年もかけて渡り歩くことを「養成所ジプシー」などと言ったりもします。これはあまりおすすめできません。
特に女性はどうしても「若さが強み」という側面がありますので、専門学校を卒業して、数社の養成所を経由、三十歳近い年齢で勝負するというのはハードルが高いと思います。
アニメにこだわらなければ、道は開ける可能性もありますがそれでも供給過多だというのが正直な見立てです。
もし家族の安心(もしくは条件など)で専門学校に行って欲しいということであれば、専門学校も視野にいれつつ、養成所の試験を受けてみることを検討して欲しいと思います。おそらく入れる養成所があります。
その場合、専門学校に通いながら養成所に通うということにもなりますので、肉体的・時間的・金銭的な部分での負荷はかかります。
それでもやり切れるのか。
そこはもう、個人の資質となりますが。
入れた場合には「入れた自分すごい」ではなく、若さという年齢的な優位があるのですから、人の三倍努力するつもりで頑張れば、夢は叶うかもしれません。
正直、高校卒業してそのまま事務所附属の養成所入所というのが声優になるための可能性としては一番高いと考えます。
●専門学校で学ぶ必要はあるのか
これは個人による、としか言いようがありません。
実際、専門学校から飛び級みたいな制度で入ってくる子はうまい子もいるとは聞きますしね。
ある程度の基礎知識やマイクに慣れるとか、そういう部分では専門学校に行くという意味はあるかもしれません。
周りに同年代がいるため、挫折しないで頑張れるというのもメリットになると思います。
しかし、ここからが大事なところですが、事務所側からすると、専門学校で学んだところで基礎が出来ているとは考えていません。
発声ひとつとっても、二十年弱してきた発声を変えるのは容易ではありません。意識して腹式呼吸が出来るというのは、身に着いているとみなしません。
意識しなくてもできる、寝ているときの寝言が腹式での発声になるようになって初めて身に着き始めた、それがプロの認識です。
収録現場では自分の思うようにいかないこともたくさんあります。
ディレクションでいろいろな要望を伝えられて、それに応えるために頭をフル回転しなければいけないときに、意識しなければできない腹式呼吸など意識から外れてしまいます。
指示はこなせたとしても腹式呼吸によるしっかりした発声ができず、それを修正しようとすると指示されたことができない。
焦る、緊張が増す、どうしようどうしよう……
こんな感じで、人は簡単に頭の中が真っ白になるという状態になることができます。
つまり、基礎は最低限できているべきものであり、その基礎練習は続けていかなければいけないものです。
あるベテランのナレーターは朝起きて3時間、基礎練習を行っていると言っていました。
もともとはアナウンサーで、そこからナレーターになった人ですが、それほど基礎を大事にしているのです。
学んでいるときだけしか意識しないもので、プロとして戦えると思うようではプロになることすら難しいと思います。
最近のマイクやミキサーは機材の性能が良いので、腹式での発声は気にしなくても良いというような主張をする人がいると聞きます。
確かにマイク性能はこの数十年でかなり良くなりました。価格帯も下がり、比較的安価で良いマイクが手に入るようになったのは事実です。
では腹式での発声が必要ないのか。
それとこれとは別の問題だと考えます。なぜならば、音には圧があるからです。
音圧という言葉を聞いたことがありますか?
イメージとしては蛇口にホースをつないで水を出したときのことを思い浮かべてください。
ホースの出口部分を少し押しつぶすと勢い良く水が出ます。
通常の放水が普段普通にしている発声で、押しつぶした勢いのある放水が腹式での発声だと思ってください。
押しつぶしたときのほうが遠くまで水の勢いが届くのと同じで、音圧のない声は空気の壁にぶつかって拡散します。
音圧のある声というのは遠くまで届くのです。
ナレーションの収録スタジオで、マイクはアームで上空に固定されています。音圧のない声はマイク前で拡散するということを考えると、BGMなどをのせたときに声が前に出てこないのです。
自宅のマイクで収録した音にBGMを乗せて聴くとわかりやすいと思います。声がBGMの後ろに隠れたようになります。
このように、マイクにしっかりと音を乗せることができるかどうかで考えると、マイク性能が良いから音は拾ってくれるだけで、仕事としては使えない声になります。
アフレコ(アニメ)やアテレコ(外画)の収録ではスタンドマイクでの収録になりますが、マイク前の出入りがある関係で、マイクとの距離はナレーション収録よりも離れることになります。
居酒屋などの人が多く、騒がしい場所で店員を呼ぶときに実験してみると、音圧のない拡散されがちな声はまわりにかき消されて店員まで届かないことをより理解できると思います。
拡散する声は「うるさいけれど前には届かない」ので、基礎はしっかり身に着ける努力をしてほしいものです。
●ボイストレーニングには行くべきか
ボイトレは、プロでも通っている人が多いです。
ある売れっ子声優の一日は、朝10時から仕事、仕事、仕事、22時からラジオ収録、26時(深夜2時)からボイストレーニング、27時にレッスンを終えて帰宅。そして翌日10時から仕事……。
こんな生活をもう十数年続けています。
当然ボイトレは毎日ではないと思いますが、台本や映像のチェックとか準備はいつやるんだ、という話です。
それほど忙しい毎日でも、ボイストレーニングの時間を設けているということがどういうことか。
このブログを読んだのを機会として、考えてみることをおすすめします。
今回はここまでとします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
